生活保護は日本の憲法25条で規定されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現するための制度です。
別の言い方をしますと、憲法25条は「国民には生存権があり、国家には生活保障の義務がある」ということなのですが、これはつまり「すべての人には人間らしい生活を送る権利があり、国(政府)は、そのための取り組みをしなければならない」ということを意味しています。
「人間らしい生活」とは?
それは、食べる物があり、住む所があるということです。3食まともに取ることができないというのはすでに人間らしい生活とは言えませんよね。
また、ホームレスのように住むところがないというのも、やはり人間らしい生活とは言えません。
ですので「人間らしい生活」とは、最低限それらが備わっている状態を指しているということです(あくまでも最低限です)。
そして、その健康で文化的な最低限度の生活を保証するための制度として、生活保護制度があります。
つまり、3食食べることができない、住む所がない、そんな人は生活保護を受ける権利があるということになります。
生活保護を構成する8種類の扶助
生活保護は次の8種類の扶助から構成されています。
(厚生労働省ウェブサイトより引用)
生活を営む上で生じる費用 | 扶助の種類 | 支給内容 |
---|---|---|
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) | 生活扶助 | 基準額は、(1)食費等の個人的費用(2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。特定の世帯には加算があります。(母子加算等) |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
上の表にあるように、これらすべてがお金で支給されるわけではありません。たとえば介護費(介護扶助)や医療費(医療扶助)のように福祉事務所(生活保護課)が本人に代わって支払いをする場合もあります。
上記の8種類の扶助以外にも、転居費用のように一時的な費用をまかなってくれるケースもあります。
生活保護ではいくらもらえるのか
厚生労働省によりますと、
厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。<厚生労働省ウェブサイトより>
とあります。
たとえば、あなたが遺族年金で生活しているとしましょう。仮に、その年金額が月に85,000円だとします(2ヶ月で170,000円)。
国が定める「最低生活費」が月に100,000円の場合、月に15,000円が不足している状態です。つまり、100,000円-85,000円=15,000円を生活保護費として支給される、というわけです。
ですので、年金をもらっているから生活保護を利用できないということはありませんし、仕事をしているからダメということもありません。「最低生活費」よりも収入が少ないなら申請することができるのです。
具体的な計算方法についてはこちらの記事もご覧ください。
[blogcard url=”https://sapporo-legal.jp/archives/1076“] |
保護を受けられない場合
では、どんな場合には生活保護を受けられないのでしょうか。
それは前述の計算をして、最低生活費よりも収入のほうが多い場合です。
もし遺族年金が85,000円で、その他にパート代が80,000円で合計165,000円だったとしましょう。仮に最低生活費が100,000円の場合は収入のほうが65,000円多くなります。
このケースでは保護を受けることはできません。
もし、預金・生命保険・土地・家屋・自動車・貴金属などを所有している場合は、それらの活用でできる資産をまず生活のために活用(売却)してからということになります。
まとめ
どんな人が生活保護を受けられるのか、またいくらもらえるのかという点についてまとめてみました。
「生活保護を受ける」ということに、恥ずかしさや気後れといったものを感じる方も少なくないようです。ですが、これは憲法で保障された権利です。
- お金がなくて3度の食事すら取ることができない
- 家賃を滞納していて払えない
- 子供が必要としている物を買うこともできない
- もうダメだ・・・
こういう状況に置かれている方はぜひ一度相談してみてください。当事務所でお手伝いできることがあります。